2012年9月10日月曜日

夏雪ランデブーとプレスコ


夏雪ランデブーは2012年の7月クール、フジテレビノイタミナ後枠のアニメ。

なんとまあ、とうとうこんなアニメができてしまったのかと、そのくらいマイルストーンになりうるアニメだと個人的におもってますので、ちょっとまとめ。


夏雪は、主人公葉月と彼が想いを寄せる花屋の店長六花、その元旦那で幽霊の篤の三角関係を描いた、ちょっぴりファンタジーなラブストーリー。


で、すごいポイントは、なんといってもプレスコ。


前提として、アニメは基本アフレコ。画を作ってそれを観ながら声をあてるという手法。プレスコは、先に声を録って、それに合わせて画を作る手法で、ディズニー、ジブリとかが使う方法です。

プレスコのなにが良いのかっていうと、とにかく自然。
たとえば「あ、どうも、こんにちわ」って挨拶。

「あ」と「どうも」と「こんにちわ」のあいだの間とか「あ」「どうも」「こんにちわ」それぞれの長さって、人それぞれだしケースバイケースなわけですが、普通アニメを作るときは、どういう尺にするか、画を作る側が考えて口パクをつけるわけです。
で、それにアフレコするときは、その間に合わせて声優が演技をする。

その生理的な間取りを画描きが想像して制作するのはかなりの負担だし、下手すると制作し出した段階で声優が決まってなかったりもする。
あ、この人だったらもうちょっと尺を長くすべきだった的な後悔も間々あるそうで。

プレスコの場合は、その尺取りはある程度声優まかせになるわけです。声のプロにまかせる。制作的負担も少なくなるし声優はより自然な演技ができるようになる。

もっというと、俳優が声優やる場合は自由に演技してもらってアフレコ技術の不足をカバーできるし、夏雪のような深夜アニメ作品でも、声のプロである実力派声優にいわばそのキャラクターのディレクターになってもらうことで、より自然で伸び伸びとした演技ができるわけです。
また、夏雪では語尾が聞き取りにくいセリフがあったりもする。もちろん監督の指示で、人は普段からそんなにはっきりしゃべったりはしないだろ、と。たしかに。近年進んでしまっている、いわゆる過剰な演技とは真逆の姿勢。
でも、そのボソッと呟いたセリフにもちゃんと合わせて画を作ってるからとても自然なシーンにみえるわけ。


松尾監督はプレスコにこだわりがあって、これまでも多くのシリーズ物をプレスコでやってる方なのですが、曰わくプレスコのほうが前述のような理由で楽だとおっしゃってます。なるほど確かに。


で、実際このアニメを観てみると、、
なんか、もう、普通の月9みたいに見えるわけです。もはやドラマ。
もちろん、幽霊が出てくるという部分ではアニメにしかできない映像表現だし、ドラマにはなり得ない作品ではあるけれども。

普段見慣れてしまったいわゆる深夜アニメは、気がつかないうちにいろんな補正をかけて観ているところがあったりするもので。
普段観ない人がアニメを観て感じる違和感っていうのはそのへんにあるのかなぁと。


なにが言いたいかって、この夏雪ランデブー、普段アニメを見ない人にこそ観てもらいたい作品だということです。
みんなが勝手に持ってる「アニメ」の固定観念を壊してくれるかも。



参考
ノイタミナラジオ 第70回松尾監督ゲスト回
←9月中ならまだ聞けるはず。